かぼちゃプリン

 右のプリンを食べられたら、左のプリンを差し出しなさい。真ん中のひとつは冷蔵庫に、風呂上がりに食べます。汝プリンを愛せよ。3つあるのはお母さんと兄弟を想定しての事、お父さんは、ひたすらの涙目を浮かべながら。

 というわけでプリン。私は世間でもてはやされている物ほど鋭角から眺めるひねくれ者ですのでプティングというものに大した思い入れは無く、せいぜい私の中でのプリンとはプッチンする瞬間に技術点、カップを工作に用いてアイディア賞くらいな位置づけだったのです。その姿はクラスのマドンナを「まあかわいい方だと思うけど」と検分する男子に似たり。しかしクラスのマドンナは意外や意外、一見素朴な隣のクラスのB君が好きで……この話はいいや。とにかく。

 カボチャプリンが美味しかった。

 口に入れた時に感じた通常のプリンとは違った、かぼちゃの実の詰まった滑らかな舌触りがそれはもう綿密にカボチャは裏ごしされたのでしょう。惜しむらくは食べたのがお洒落なカフェでも何でもなく、お寿司屋さんだったということですね。

 最近、生意気に食後にデザートなどと言うことを覚えまして、いつものアイスクリームでは肌寒いと思い、わりあい満腹なときに食したものがあれほどまでに美味しいとは。とても甘かった。甘かったけど、華やかな舞台の裏で経験不足から寿司を握らせてもらえないので泣く泣く毎日早起きして何の因果か寿司屋でカボチャの裏ごしをしている青年のことを思えばほど良い甘さというものです。居るのか、そんなお兄さん。なんと気の毒なパテシエ男子。いや、工場で作られたものなのか?パートのおばちゃんが作っていようと工場のシステムで作られていようと、それなりに美味しければ私は特に気にならないので、それならそれで構わないのですが、悩める寿司職人の卵が居ないならそれはそれで、良し。
 執拗に裏ごしされるカボチャに思いを馳せつつ、ああ。
 カボチャとプリンはいかにして出会ったのか。
 余談ですが、アイスクリームにクッキーを放り込んだお方は天才だと、私は思います。教科書の片隅に載っていたカボチャ農家の写真が脳裏をよぎります。トンガの日本向けカボチャ栽培は伝統的な作物を圧倒し……思い出す写真を間違った。モノカルチャーの弊害はとにかくカボチャプリンが美味しかった。少しはシンデレラのかぼちゃの馬車がスタッフに美味しく頂かれた結果とかそういうなんかメルヘンチックなことを考えられないのか。メルヘンなんだろうか。とにかく場所が寿司屋なので毎日寿司というわけにもいかないし、プリンを食べるために通うというわけにもいきません。出世したらうらぶれて毎日課長と不正経理を隠しつつ寿司バーでプリンが食べたいなあ……。ついに顔なじみの刑事に追いつめられた私は「最後に一杯やってから」とプリン杯を僅か上に傾けなんで妄想で汚職してるんだ。おかしいな。

 カボチャですから、季節限定のものであったのでしょう。ああ、ああー。同じ川に2度入ることはできない。あのカボチャプリンも食べられないのか。あの味が忘れられず、コンビニでカボチャプリンを買ってみたものの普通の味でした。寿司という非日常にテンションが上がっていただけなのか、それは分かりかねますが。とにかく、とにかく私は声を大にして、サーモンが好きだと言いたい。
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