フューチャーウォーカーの感想

ミさんがチェインさんを置いてって、北に旅立ったとき、不意打ちを食らって愕然としました。あれ? ヒロインはチェインさんだったのか?
いや、そもそも、主人公やらヒロインやらの区別がうさんくさいものですが。いや、あれ?
そうだよね。ついていかなくてもいいよね。足手まといだもんな。ついていかなくてもいいんだな。ついていかなくてもいいんだ!? いいのか!!!

吹っ切れたチェインさんの手により、わずか2ページで家が建ったときの驚きたるや結構なものがあります。
薄々思ってたけど、きみたちそういう人だもんな。
待っているチェインさんがすごく生き生きとしている分、なんだかすがすがしく晴れやかで、ずいぶんと印象に残っているシーンです。

フューチャーウォーカーを読了しました。
ミさんとファさんの姉妹、そしてチェインさんの3人は、非常に不思議なキャラクターだったなあ。
フューチャーウォーカーであるミさんはともかく、残りのお二人も非常にどこか人間離れしたところがあるといいますか。いや、ファさんの生まれを考えると、ひょっとするとチェインさんが特別なのか。
ただただ調停者として運命に従い、世界をあるべき風に戻そうとしている風なのが、まるで人間のお仕事じゃないなあと思います。まかりまちがっても人間のすることではないなあ……。

前作に引き続き、いろいろと哲学を与えてくれる物語ですが、過去、現在、未来という時の流れについての思想はとても楽しかったです。原因と結果が逆になる! ああー、いまだにこんがらがっています。
それと、未来の報酬を現在に受け取って、未来でお支払いをしているという思考実験が面白かったです。こういう本を読んでいると、また一つふさっとものの考え方が開けて、ちょっとだけ生きるのが楽になるような気がします。ほんのちょっと。

時間が停滞したことで、魔術師のソロチャーさんや吟遊詩人のファハスさん、空騎士3人組などといった歴史上の偉人が次々と復活するのが面白くってしかたありませんでした。

いろんなものの決済をしていく7巻は、間違って始まってしまったお祭りが、正しく終わってしまうようなさみしさがありましたね。

そういえば、レッティンドロールスさんが死ぬのを見たとき、「ああ、このための名前だったのか」と反射的に思ってしまったんですが、彼が復活して、また復活する人たちの条件を知ったときには、ひょっとすると名前があったからこそ復活したんじゃないかとも思いました。ソロチャーさんは一番手だったからしょうがないよねーと慰めておられましたので、全く関係ないかもしれませんけれど!

今回は主人公の視点というようなものがなく、読者の特権でいろいろなシーンが見られたと思うのですが、ハルシュタイル侯爵の逃亡の随伴者たち、あるいはコリのプリーストといったちょっと世間に後ろめたいところのある主従関係が非常に面白かったです。



作中で一番好きなのは、シンスライフの謎解きに関わる一連のシーンです。伯爵の謎解きの仕方もですが、それに、儀式に必要な人数は一人少なかったというオチが最高ですよね。あれ、でも猫の命は9つって言ってなかったっけ、と思ったら、1番目がシンスライフ本人なわけですよね! あーもう、しびれる!
あの混迷としていて、何をすればいいか分からない空気は最高に味わい深かったです。繰り返される「侯爵を殺す」の破壊力たるや。一筋縄ではいかないいろいろな思惑が交錯していて、まさに章ごとに視点が変わる作品の、一番交差点であるような気がして。

もう一つ挙げるとするならば、やはりケイトちゃんと空騎士様の交流でしょうか。子どもの遠慮の無いずけずけした物言いと、少女のかわいらしさがかみ合っていてとても良かった。空へ登った騎士はどうなるか、彼らは例え話の通りに空に帰るんですよね。最後に3人が帰還を果たすシーンがとても大好きです。

ちょっと短いシーンをあげるなら、巨人との問答をするシーンが、まさにキャラクターを現していて非常に好きでした。アフナイデルさんの数学的な問題、エデリンさんのちょっと意地悪な引っかけ問題や、エクセルハンドさんのドワーフならではの問題。イルリルさんの口説き文句なんか、キャラクターのそれぞれを現していて最高でした。アイルペサスさんはご愛敬。あの子の口上が非常にかわいいんだよなあ。
ああー、ジェレイントさんだったらどんな問題を出したのだろうか。



前作のドラゴンラージャからとても好きだったアフナイデルさんやジェレイントさん、それにサンソンさんの手に渡ったプリムブレードさんの姿が見られてとても楽しかったです。
「テペリ、イッツ・ナイス!」ですでにやられていました。あのセリフを聞いて、今作も好きでいることに決まったのです。
ネリアさんとウンチャイさんも、フラグとともにお元気そうでなによりでした。

ハルシュタイル侯爵の株がうっかり上がってしまったのだけが誤算でした。
ちょっとだけ。ちょっとだけな! ほんのちょっとだぞ!
死に際にいい奴になるキャラクターというものは経験上、なんとなく知っておりましたけれど、死んでから急に親切になるパターンは初めてかもしれない。
いや、そういえば、前作のネクソンさんもある意味半死半生っていうか、5分の4生くらいになったものな。あのときから急にむくむくと同情心が湧いてきて、可哀想に思うだけそれがまた彼のプライドを傷つけるのだろうと考えると、妙に複雑な気分でした。
トルーマンくん、グランさんちの子になりな? な?

2017/4/15
ささやかですが、お約束していた感想です。
素敵な本をおすすめしてくださってありがとうございます!
(追記)
2017/4/18
レッティンドロールスさんについて追加しました。レッティドロールス
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